国民民主党の田中健です。
私は、会派を代表して、ただいま議題となりました令和六年度総予算案外二案に反対の立場から討論を行います。
昨日で、能登半島地震の発災から二か月がたちました。改めて、失われた貴い命に心からのお悔やみと、被災された皆様にお見舞いを申し上げます。
復旧復興に向けて日々取り組んでいただいている全ての皆様に感謝と敬意を表するところですが、政府の今般の地震における被災者への新たな交付金制度は、被災地域、被災者の年齢によって分断を生むものであり、極めて不十分であります。
立憲民主党、日本維新の会と共同で法案を提出しておりますが、被災者生活再建支援金を拡充し、最高額を三百万円から六百万円に倍増するとともに、支援金の国庫補助率の引上げと適用地域の拡大を強く求めるものであります。
さて、我が国は、長期にわたり停滞する経済、止まらない少子化傾向という深刻な問題に直面しています。総理は、今国会冒頭の所信表明演説で、経済の再生が岸田政権の最大の使命、経済、とりわけ賃上げがまさに喫緊の課題であると述べられました。
この春も、賃金も経済も安定的に上昇する経済社会に向けてステージ転換を図る正念場です。連合が目標とする、ベアで三%以上、定期昇給と合わせて五%以上の賃上げ実現のためには、政治と経済界、労働組合が昨年以上に力を合わせなくてはなりません。政治の果たす役割として、最優先課題である物価上昇を上回る賃金上昇を実現するための予算編成は急務であります。
しかし、岸田政権が編成した令和六年度総予算案には、個人負担を増やすなど、賃上げの効果に水を差すものが含まれており、日本の根本的な問題への解決策が欠落しています。これまでと同様、課題解決を先送りするどころか、更に事態を悪化しかねない点で問題です。
まず、国民の暮らし、事業経営を圧迫しているガソリン価格や電気代の具体的な高騰対策が盛り込まれていません。特に、現在の燃料油価格激変緩和補助金は、会計検査院からも問題が指摘をされており、本年五月以降の出口戦略として再三再四にわたりトリガー条項凍結解除を提案したにもかかわらず、総理が決断できなかったことは極めて残念です。
賃上げの阻害要因を取り除くべく、一日も早く具体的な時期や内容を示し、明確な施策を打つべきです。
続いて、子ども・子育て支援金制度です。
子ども・子育て支援金の増加自体については、我々も大いに賛同いたしますが、政府の検討している内容では、そもそも医療保険の目的外使用であるという問題があるとともに、税金を保険料につけ替え、個人負担を実質的に増やすステルス増税となり得る可能性もあります。これ以上の現役世代の社会保険料負担の増加は、制度の目的に逆行し、むしろ少子化を加速させかねません。
また、所得税の定額減税についても、本制度では、令和六年分の所得減税から一人当たり三万円を控除することとしていますが、本施策の目的が物価高騰対策なのかデフレ脱却なのか判然とせず、三万円という金額の根拠も、本施策による具体的な効果も不明確です。
さらに、給与所得者や、事業所得がある者、また事業主、それぞれに対する減税のタイミングがばらばらであり、令和六年度末の確定申告まで減税効果を受けられない場合があることは大きな問題です。
さて、我々国民民主党は、対決よりも解決の下、常に対案を示してきました。限られた時間ですが、以下、具体案を申し述べますので、是非とも参考にしていただき、政府の施策に取り入れていただきたいと思います。
まず、給料が上がる経済を実現させるためにも、あらゆる税制改革が必須です。
先ほども触れましたが、ガソリン価格高騰対策として、トリガー条項凍結解除によるガソリン減税や、暫定税率、二重課税の見直しを行うべきです。
あわせて、広く国民生活を支える対策として、時限的な消費税の減税、電気料金値上げに対して再エネ賦課金の徴収停止といった所要の措置も講じるべきです。
また、急ピッチな物価上昇を賃金上昇が上回るまでは、ブラケットクリープ対策としての基礎控除を引き上げる所得税の減税が必須です。法人税減税として、投資額以上の償却を認めるハイパー償却税制の導入や少額減価償却資産特例の上限額の引上げも行うべきです。
所得減税については、給付つきの税額控除制度とした方が、公平性と即効性、そして簡便性を両立できるとも考えております。
子供、子育て政策としては、人づくりこそ国づくりとの考え方から、子供、子育て支援における公的給付の所得制限の撤廃や、財政法を改正して、教育や人づくりに関する支出を公債発行対象経費とする教育国債を創設、さらに、教育科学技術予算の倍増や年少扶養控除の復活などを速やかに行うべきであります。
また、自分の国は自分で守るという観点も欠かすことはできません。
農林水産業関連の物価高騰対策、それに伴う適正な価格転嫁支援や、食料安全保障基礎支払いといった所得補償を行うなど、農林水産業への多角的な支援も行うべきです。
コロナ禍で顕著になった医薬品供給問題については、薬価制度の見直しなど安定供給の実効性を確保し、イノベーションの促進やセルフメディケーションの促進に向けた施策も打つべきであります。
最後に、歳出歳入の見直しが必要です。GDP成長を踏まえると、税収は政府想定よりも上振れが想定されます。今年度税収見積りについて増額修正を行い、歳入を見直すべきです。また、政府は長期金利の指標となる十年物国債の想定金利を令和六年度予算で一・九%としていますが、令和六年度の政府の長期金利の見通しが〇・八%であることから、想定金利を昨年同水準の一・一%に据え置くことで利払い費を縮減します。
これらを盛り込んだ予算組替え動議は予算委員会でも否決をされてしまいましたが、国民民主党は、一つずつでも国民生活を支える政策を実現できるよう、引き続き真摯な議論を他党に働きかけてまいります。
困難な問題に真正面から取り組み、対決よりも解決の姿勢で、日本を再生する仕事に全力で取り組むことをお約束して、会派を代表しての討論といたします。
御清聴ありがとうございました。